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『負けかたの極意』(野村克也著)にみるプロの心と技①

負けかたの極意

負けかたの極意

  • 作者:野村 克也
  • 発売日: 2013/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

「監督生活24年、15651563敗。我、いまだ途上にありー。」・・・この本の帯の一文です。

野村氏は1935年に生まれ2019年に没するまで、

選手として、MVP5度、首位打者1度、本塁打王9度、打点王7度、三冠王ベストナイン19回、ゴールデングラブ賞1回、

監督として、南海で選手兼監督に就任しパリーグ優勝、以降ヤクルト監督で4度優勝(日本一1度)、阪神楽天監督で名選手を育て・再生しチームとして活躍した、

まさに名プレーヤー・名監督でした。

1.負けることの方が多い人生

僭越ながらこの記事を書いている私は、自分の営業人生をあらためて振り返るとおおむね順風満帆だったかなと勝手に思っています。しかし実際の営業戦績を野村氏のように勝敗数に換算すると、あたりまえですが野村氏とは比較にならないくらい圧倒的な負け比率と振り返ります。

そういう私は、野村氏の

勝ち続けの人生なんてありえない、というより、ほとんどの人は負けることの方が多いはずだ。(本書P6)

の一文に、私の営業人生のさまざまな局面で励まされてきました。

また今日の私があるのも、私の圧倒的な負け数のおかげだと思っています。

ですから、私が歩んできたと同じ営業のキャリアを歩む皆さんにもひょっとしたら私の記事が役立つことがあるのではないかと思い、ここに「『負けかたの極意』(野村克也著)にみるプロの心と技」を書きました。

ちなみに、ここでいう営業の勝ち=営業の思惑通りの成約・契約締結です。

ご一読いただき参考になれば幸いです。

2.勝ちを求めるから負けかたの極意が生まれる、負けが己を育てる

野村氏は「はじめに」で監督時代を振り返ります。「毎シーズン全勝」を目指し、「毎試合勝つつもりで全力で挑んだ」からこそ得られた戦績「15651563敗」であったと。

また氏は選手・監督時代を通じて、以下のように述べいます。

「なぜ、うまくいかなかったのか。何がいけなかったのか」

原因を突き止めたら、次はこう考えた。

「どうすればうまくいくのか。そのためには何をすればいいのか」

試行錯誤を繰り返すなかで、少しずつ進歩していった。私の人生はまさしくその連続だった。失敗や負けから学び、次に活かすことで、技術的にも精神的にもより強くなっていった。

(本書P2)

まさに野村氏の『極意』が野村氏の人生の幹を太くし、枝葉をおい茂らせたのだとも思いました。 

2.人は勝利から学ばない

野村氏は、

人は勝利から学ばない(本書P19、第一章のタイトル)

と断言します。理由は以下の2-1、2-2にあります。

2-1.野球は確率とのたたかい

野球とは失敗のスポーツである(本書P20)

野球は確率のスポーツである(本書P21)

選手がどんなに優秀であっても打率ならせいぜい3割台が限度。7割は打ち損じているわけです。なぜならバッターは打ちたいと思いますが、ピッチャーは打たせまいと思うからです。プロ同士のたたかいだからです。よって野球は失敗のスポーツであり確率のスポーツといえます。ゆえに上手くいったことより失敗の確率を減らすためにどうするかを考えることの方が重要だと氏はいいます。

営業もどんなにベテランで優秀であっても100戦全勝はありません。営業は成約・契約締結したいと思いますが、お客様や競合会社は思惑通りにはいさせないぞと思うからです。どちらもプロ同士の戦いですから知識・スキル・行動力の点でしのぎを削るからです。とくに新人の頃には成功より失敗の方がはるかに多くなります。

野球と同じではないでしょうか。

2-2.新人もベテランも基本動作を繰り返すことで失敗確率を下げる(成功確率を上げる)

ならば失敗確率を下げる(成功確率を上げる)ためにはどうしたらいいでしょうか。

氏は、基本動作を繰り返し徹底的に訓練して身に付けるしかないと説明します。

営業も同じです。とくに新人営業はとにもかくにも基本動作を繰り返し徹底的に訓練して身に付ける必要があります。営業にとっての基本動作とは、商品などの知識や説明スキルや行動力だと一般にいわれますが、私はお客様を魅せる知識とスキルと行動力・競合を駆逐できる知識とスキルと行動力のアウトプット力が必要だと思います。なぜなら営業のプロだからです。アウトプットできなければたたかいにならないからです。

この点では営業もプロ野球選手に負けない徹底した実践訓練が必要だと思います。

またベテラン営業も、ベテランだからこそつねに基本は何だったかを繰り返し振り返り、修正を続けることが必要です。※

※ちなみに私がベテラン営業だったころに自己管理上一番大切にしていたことは新規開拓訪問数でした。ベテランになると上得意のお客様とベタコンになりそれだけで高い業績は保証できます。しかしそれでは営業センスやスキルが鈍ってしまうと思い、あえて新規開拓リストを作成しキャンバシングと称し訪問していたのです。・・・いま思えば、野球でいう足腰を鍛えるための走り込みと同じ発想でした。

新人もベテランも基本動作を繰り返すことによって失敗確率は下がって(成功確率は上がって)いきます。野村氏がいう通り、プロとしての基本中の基本だと思います。

2-3.負けを分析し対策することによって失敗確率を下げる(成功確率を上げる)

そして失敗確率を下げる(成功確率を上げる)ために次に重要なことは、

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし(P22)

すなわちなぜ負けたかの探求だと氏はいいます。

例え偶然/不運のように見えても、負けには必ず負けに至った理由があります。それを徹底的に分析し、対策を練ることによって同じ轍(てつ)をふむ確率は格段に低くなるというのです。

これも営業も同じです。

2-3.ポジティブ・シンキングだけでは勝ちにはつながらない

そして氏は「負けより勝つことから得る達成感や喜び、感動が、自信につながりさらなる目標達成への意欲を促す」という今日的なポジティブ・シンキングは否定しないが、プロの心構えとしては不適ではないかと警鐘を鳴らします。

なぜか。「勝ちから人は学ばない(学べない)」ことと(本書P35~37)、勝つことから得る達成感や喜び、感動は確かに人を「気分よく」させ一瞬強くしますが、その強さは持続しないと結んでいます(P42~44)。

私はこの部分についても野村氏と全く同感です。

皆さんはどう思われるでしょうか。

3.常勝より適度に負けたほうがいい理由

 野村氏は常勝チームのリスクも指摘しています。その理由は「人は勝利から学ばない」がありますが、そこをもう少し押し進めて以下の3-1、3-2の理由を述べています。

3-1.敗者は勝者よりなりふりかまわず考える

敗者はなりふりかまわない(本書P69)

プロとして負けるから考える。負けると悔しいし負けを振り返るのは苦しい作業ですが、プロだからこそ二度と負けないためにも「なぜ負けたか」を考えざるを得ないと。

ここでいう負けを考えるとは「自分の短所や弱点を自責でとらえること」を指します。対戦相手あってのプロ野球選手です(お客様や競合あっての営業です)。・・・相手チーム、選手やお客様、競合を敗因とするのではなく、それを乗り越えられなかった自分に問題ありとの視点で短所や弱点をつぶしこんでいくべきということです。

私の営業経験からもいえることですが、競合会社は私の弱点を知ったらいついかなる商談でもその私の弱点を突いてきます。相手もプロですから。・・・よって私は自分の弱点を無くすしか勝つ方法はなかったのです。

短所は長所を消してしまう(本書P38)・・・

カーブが打てないという短所を克服しない限り、長所も活きることはない。バットを振るときは弱い腕の力しか出ないから、強く振るためには弱い腕を鍛える必要があるように、短所や欠点を克服しなければ、長所も宝の持ち腐れになってしまう。(本書P59)

投手とバッターの関係と同じだと思いました。

3-2.勝者には変化を嫌うリスクがある

また野村氏は、勝者は成功体験を積むことができるメリットをかかげる一方で、成功体験が過信やおごりや満足を生み、時代や世の中の変化に対応できなくなってしまうリスクを抱えることになるとも指摘しています。

大切なのは、成功に浮かれることではなく、失敗を見つめることだ。

(本書P53)

負けは謙虚さと慎重さの母(本書P56)

今日の敗者が明日の勝者になれる理由がここに潜んでいるといっています。

 3-3.変われば眠っていた才能が目覚める

勝つために変われば、新たに眠っていた才能が目覚めることもあります。

本書には野村再生工場としての事例が多く紹介されていますが、勝つために敗者は勝者より失敗を見つめて自責的に考えることにより、新たな対策が生まれます。そこに新たな才能の芽が潜んでいたということはたくさんあると振り返ります。

以下は、ヤクルトの1億円プレーヤー土橋勝征さんの長距離打者からの転向例です。

「ホームラン王を目指すのか、首位打者をめざすのか。おまえは首位打者だろう」

そしてこう続けた。

「ヒットの延長がホームランなのだ。ホームランがほしいなんて、絶対に考えるな。ヒットを打つことに徹底しろ。そうすれば、使い道がでてくる」

土橋は私の言葉を素直に受け入れ、アベレージヒッターに方向転換した。

・・・

もしあのまま変わることなく、間違った努力を続けていたら、早晩、引退に追い込まれていたのではないかと思う。変わることが、彼を一億円プレーヤーに押し上げたのだ。

(本書P98~99)

 営業の世界にもあります。自分が目指す営業パーソン像とそれを適切に指導してくれるメンターとの出会い。・・・自分が変わる瞬間であり、新たな才能が引き出される瞬間です。

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と以上ここまで書いてきましたが、つい調子に乗って書き過ぎてしまいました。

よって以降は「【営業力強化】『負けかたの極意』(野村克也著)にみるプロの心と技②」に譲ることにします。コチラ↓

nanndemotanoshimo.hatenablog.com

ここまで読んでいただきありがとうございました。