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成約率アップのための正しいBANT-Cの活用法(事例付き)

<悩んでいる人>

訪問してもお客様に何をヒアリングすればよいのかわからない(営業)

お客様に提案するがそこからなかなか進度アップしない(営業)

進度アップはするが途中で商談(案件)が止まってしまう(営業)

クロージングまで行くが失注してしまうことが多い(営業)

上記について部下からアドバイスを求められたが、アドバイスできない(マネージャー)

全体的に失注商談(案件)が多く営業生産性に影響が出ている。何とかしたい(マネージャー)

こんなお悩みを解決します。

 

<本記事の内容>

  1. ヒアリングと商談評価の最強フレームワークBANT-Cの活用法
  2. BANT-C(バントシー)活用の3つのコツ

以上について事例付きで解説します。

 

これまで成約率アップのために、「【営業力強化】成約率アップを目指すクロージングトーク9選」「【営業力強化】成約率アップのための障害対処・克服法」で、実績・定評のある方法論を紹介してきました。

【営業力強化】成約率アップを目指すクロージングトーク9選 はコチラ↓

nanndemotanoshimo.hatenablog.com

【営業力強化】成約率アップのための障害対処・克服法 はコチラ↓

nanndemotanoshimo.hatenablog.com

商談成約の90%はクロージングの前段階までの活動で決定するといわれています。よってせっかくクロージング力を鍛えても、クロージングの前段階までの活動が不十分であれば成約率は低くなります。

今回は、お客様の検討開始から商品の決定・決裁までの購買プロセスに先手をうち競合他社に後れをとらない「ヒアリング力」と各段階における「商談進捗を評価する方法」を身に付けるために定評あるフレームワークBANT-Cについて書きました。

この記事を読んで「正しいBANT-Cの活用法」を知れば成約率アップにつながります。

1.ヒアリングと商談評価の最強フレームワークBANT-Cの活用法

1-1.BANT-Cの意味

BANT-C(バントシー)は、Budget、Authority、Needs、Timeframe、そしてCompetitorの頭文字をとったものです。それぞれの意味は、

  • Budget:予算
  • Authority:決裁権・起案~決裁ルート
  • Needs:ニーズ・必要性
  • Timeframe:購入・導入時期
  • Competitor:競合会社名・競合会社の動き
  • Company:自社のビジネス性)

です。

お客様が商品を買うには理由(Needs)があります。買うためにはお金(Budget)が必要です。お金を遣うためには合意と承認(Authority)が必要です。いつ買うか・いつから使うか(Timeframe)も決めます。そしてお客様に商品を販売したい人たち(Competitor)は他にもいます。・・・これらのお客様の購買に関わる重要な項目を網羅しているのがBANT-Cです。

よって営業パーソンが商談を進め・成約をもらうにあたっては、これらの重要な項目を無視して営業活動を進めることはできません。BANT-Cは、お客様の検討開始から商品の決定・決裁までの購買プロセスに先手をうち競合他社に後れをとらないためにつねに向き合うもの(フレームワーク)です。

ちなみにBANT-CのあとにもうひとつC(Company:自社のビジネス性)を加えてBANT-CC(バントシーシー)と呼ぶこともあります。このCは自社のビジネス性を確認する項目でその他の項目とは種類が異なるため、今回は省略します。

1-2.BANT-Cの2つの活用法

BANT-Cは以下の2つの活用の仕方があります。

以下にそれぞれについて説明します。

1-2.ヒアリングのフレームワークとして活用する

BANT-Cはヒアリングのフレームワークとして活用できます。

とくに訪問初期には、以下のようにBANT-Cを参考にヒアリングすべき項目を洗い出すことができます。()内はヒアリング項目の意義を補足するものです。

  • Budget:お客様が問題点・課題を解決するために予定している予算はいくらか?(例えば100万円の予算なのか、1000万円の予算なのかによって提案商品や提案の範囲、自社の提案する体制が変わるからです。)
  • Authority:起案者は誰か? 意思決定者(実質的な商談決定者)は誰か? 最終決済者は誰か? 決裁ルートは?(面談者=起案者がベストです。意思決定者を知ることによって最終的に誰を口説けばいいかがわかります。最終決裁者の決裁を視野に入れた提案内容を検討する必要があるからです。)
  • Needs:部門のニーズか? 会社のニーズか?ニーズの優先順位の高さは? 具体性は?(提案商品や提案の範囲、自社の提案する体制が変わるからです。お客様のニーズの優先順位=商談の優先順位になるからです。自社で充たすことができるニーズかどうかも判断できます。)
  • Timeframe:購入・導入時期の予定は?決済期間は?(お客様の予定時期・決済期間がわかれば今後の商談スケジュールや自社の計上予定時期もわかるからです。)
  • Competitor:競合会社名・競合会社の動き(競合があるかないか、競合の強さ、差別化ポイントがわかるからです。)

以上の項目をチェックシートにして訪問しヒアリングを行えば、お客様に何をヒアリングすればよいのかがわかり、かつ抜けもれなくヒアリングすることができます。

一度にヒアリングできなくても、商談初期を通じて可能な項目から確認していきます。

1-3.商談評価のフレームワークとして活用する

BANT-Cは、営業が商談を進めるにあたってその商談の確度(自社が成約できる可能性)の評価、マネージャーからみて順調に進度アップしているかの評価のフレームワークとしても活用することができます。

以下に、BANT-CC全体を通じての商談評価と各項目についての商談評価の例をみてみます。

BANT-CC全体を通じての商談評価の例: ※(→××)は対策案

  • BANT-Cの各項目について営業がお客様にヒアリングを行うが、いつまでたってもお客様の回答があいまいだったり、教えてくれないなどの反応が続くことがあります。こういうケースは、営業が面談する相手を間違えている可能性やお客様が個人のニーズや関心事で検討を進めている可能性が考えられます。またお客様はすでに競合他社に決定していて当て馬にされている可能性もあります。(→面談者をかえて商談の存在やステータスを確認する必要があります。)
  • マネージャーがBANT-Cの各項目について営業に質問すると、把握できていない項目が多いことに気づきました。これは非常に危険な状態です。あとで多くの手戻りが発生してしまうか、迷宮入り・失注してしまう可能性が高い商談です。(→営業がお客様のニーズや購買のしくみ、競合の動きを放置した商談の進め方をしていないかをマネージャーが確認する必要があります。)

BANT-CCの各項目についての商談評価の例: ※チェック項目のみ記載

  • Budget:予定予算内での提案内容になっているか。仮に予算オーバーする場合はその根拠は明確になっているか。(お客様も納得し、そのつもりで動いてくれているか。)
  • Authority:担当者・意思決定者はもとより、決裁ルートで関わる各人および決裁者は提案内容を理解しているか。反対者はいないか。
  • Needs:ニーズに対してそれを充たす品質(Q)・価格(P)・サービス(S)の提案になっているか。そのことを少なくとも担当者・意思決定者は理解し納得しているか。
  • Timeframe:購入・導入時期の予定に変更および変更の要素はないか。稟議ルートにいる人の長期出張などないか。自社が希望する商談納期は提案したか。
  • Competitor:競合優位性は説明し納得しているか。競合会社にどんでん返しの動きはないか。

など、以上のようにこれらの項目をチェックすることによって、商談の進捗を適切に把握(=商談評価)できるとともに、今後の進捗に必要な活動の洗い出しができ、結果的に商談の滞留・失注を未然に防ぐことができます。

いいかえれば商談の受注精度が向上します。

2.BANT-C活用の3つのコツ

最後にBANT-C活用の3つのコツについて書きます。

2-1.ヒアリングおよび商談評価は一度やればいいというものではない、商談進捗の各段階で行う

ヒアリングおよび商談評価は一度やればいいというものではありません。つねにお客様や競合は変化しており、そしてそれにともなって商談の状況は変化します。

商談の状況が変化すれば、営業パーソンの対応も変わります。

以下に、商談の進捗に決定的な影響を与えかねない例をあげます。

  • Budget:会社を取り巻く環境の悪化にともない会社の業績も悪化した。よって予算計画が見直されることになった。→商談予算が大幅に削減される可能性、商談の優先順位が変わる可能性があります。
  • Authority・Competitor・Timeframe:これもよくある例ですが、競合会社が営業を通じてバーター攻勢をかけてくることです。稟議ルートに営業がいれば反対者になり得ますし、そこで反対されれば大きな商談成約リスクになります。仮に営業パーソンがこのリスクを回避できたとしても、購入・導入時期の遅延要因にもなり得ます。

このように営業パーソンは商談進捗の各段階において可能な限り新たな情報の入手に努め、つねに敏感かつ冷静な商談評価を繰り返し対策を講じる必要があります。

2-2.得られた情報はそのまま鵜呑みにせず、必ず裏をとる

また、ヒアリングによって得られた情報はそのまま鵜呑みにせず、必ずをとることをお薦めします。覆水盆に返らずの例えの通り、とくに商談進捗の後半になって覆されても、営業パーソンとしてはもう戻りようがありません。

以下に、BANT-Cの裏をとるための活動例をあげます。

  • Budget:お客様担当者に聞いて終わりではなく、予算を統括する部門(ex.経理部など)を担当者に紹介してもらい挨拶と称して裏をとります。
  • Authority:稟議ルート、決裁者など、同様に総務部門で裏をとります。
  • Needs:できる限り稟議ルート上の人とコンタクトをとるようにします。また会社課題の解決においてはその課題に関わる全ての部門に、部門課題の解決においてはその部門の前工程・後工程部門を訪問して課題解決の影響を考慮した提案を行うなどです。
  • Timeframe:関連する部門に阻害要因がないかどうかの裏をとります。

商談規模にもよりますが、以上のような方法と内容で裏をとることは欠かせません。

蛇足ですが、上記の補足を目的に、かつて経験したある商談の例を書きます。

その商談のお客様は営業を統括する執行役員でした。担当営業はその執行役員とベタコンで気に入られていたこともあり、あるシステムの大型商談(売上1億円以上)がとんとん拍子で進捗していました(導入時期はその年の9月予定で進捗していました)。売上金額も大きいため、担当営業の上司は何度も「大丈夫か?順調に進捗しているか?」と確認は続けていたようです。それに対して担当営業は「執行役員と進めている商談ですよ。安心してください、うまくいっていますから。」という回答でした。1ケ月後、執行役員からキャンセルの連絡が入りました。執行役員いわく「情報システムを統括する役員からクレームが入った」とのことでした。情報システムとしては10月の連休で社内ネットワークをすべて切り替える予定で動いている。いまさら9月に新たなシステムをつなぎたいといわれても困る。社内ネットワークは全社的な課題解決策だ。部門課題の解決は来年の計画にして欲しいと。結局、この商談は翌年、情報システムの薦めで社内ネットワークを担当した他社にすべてとられてしまいました。

担当営業は執行役員のいうことを鵜呑みにし情報システムとのコンタクトをお客様任せにした結果、また上司はただ大丈夫か?と心配しただけで行動を起こさなかったことによって、一瞬にして商談は消滅してしまった例でした。

同行して複眼視することを心がける

人の思い込みはなかなか変わりません。人が人ゆえの弱さでしょう。ヒアリングに抜け漏れを出さないためにも、商談評価とその結果による対策を確実に実行するためにも、先輩やマネージャーが営業と同行し、できるだけ複眼視することを心がけるべきです。(上記のシステム商談のケースもそうでした。)

また、営業はお客様担当者と同じ担当者としての目線があります。その上司は上司同士の経験とそれに基づく目線があります。経営トップも同様です。営業がお客様のすべての階層の人と適切にコミュニケーションを行い有効情報を得ることは難しいものです。商談の状況や面談者に応じて自社の人選を適切に行うことは、BANT-Cフレームワークを最大限に活用するコツであることを覚えておいてください。

以上、ヒアリングと商談評価の最強フレームワークBANT-Cについて書いてきました。

 ぜひ「正しいBANT-Cの使い方」を身に付けて、成約率アップにつなげてください。