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『負けかたの極意』(野村克也著)にみるプロの心と技②

負けかたの極意

負けかたの極意

  • 作者:野村 克也
  • 発売日: 2013/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 「監督生活24年、15651563敗。我、いまだ途上にありー。」・・・この本の帯の一文です。

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この記事は「【営業力強化】『負けかたの極意』(野村克也著)にみるプロの心と技①」の続きです。①の記事はコチラ↓

nanndemotanoshimo.hatenablog.com

さて、いよいよ後半です。

そしていよいよ「負けかたの極意」の章立てに入ります。

4. 負けかたの極意

チーム再生・選手再生のプロである野村氏ならではの視点から、以下のような多くの示唆を得ることができます。

4-1. いかによい負けかたをするかがすべて

よい負けかたとは勝ちにつなげる負けかたと氏は定義しています。

チーム再生・選手再生請負人としての役割を担う氏の再生プランは、

一年目は畑を耕し、二年目は種をまいて育てる、三年後に花を咲かせます(本書P106)

です。

1年目・2年目はある程度負け数は多くなります。しかしここで意識すべきことは、同じ負けにしてもいかにによい負けかたをするかです。だから3年目に花が咲く。氏はよい負けかた=勝ちにつなげる負けかたをするためには、以下の3つを大切にしておられます。

つまらない負けを無くす

凡ミスを無くすことです。そしてもう一つ大切なこととして計画→実行→確認と書かれています(私たちが一般的に使うPDCAの手法です)。

営業も同じです。お客様訪問ひとつをとってもP(訪問目的を明確にして、目的達成のストーリーを描き、準備を怠らない)→D(実行する)→C(何がうまくいって・何が上手くいかなかったかを反省する)→A(次の訪問に活かす)を怠らない。だから自分が1訪問ごとに成長できる。その積み重ねが、その日の、週の、月のPDCAを支えるし、四半期、半期、年間のPDCAを支えます。

氏いわく、今日一日の振り返りについて、

「今日は残念だった。また明日がんばろう」

弱いチームは、往々にしてそう考える。くよくよするより、気分を転換した方がいいということなのだろう。(本書P138)

これではプロでは通用しないということだと思います。

さらに氏は5W1Hと「WHY NOT?」を明確にして考える考え方にもふれています。・・・これに関しては説明不要でしょう。ただ、

恥を知り、5W1Hと「WHY NOT?」を明確にせよ(本書P138)

というタイトルの「恥を知り、」には恐れ入りました。新人だから・(ベテランでも)時間がなく事前準備ができなかったからという一切のいいわけを自分にしない、まさにプロ意識の現れだと思いました。

また事前準備について加筆しておきますと、

正しいプロセスとは正しい準備である(本書P144)

最悪の事態を想定し、対策を練る(本書P109)

※対策→準備と読み替えていいと思います(筆者注)

その通りだと思います。

失敗を恐れぬ勇気をもって試合に臨む/臨ませる

次に大切なことは、 失敗を恐れぬ勇気をもって試合に臨む/臨ませることだと氏は述べておられます。

ここで「失敗」とは何かですが、氏は結果の失敗とプロセスの失敗を分けて考えます。結論をいうと、結果の失敗からは何も学べないが、プロセスの失敗からは多くを学べるからです。

しっかりとした正しいプロセスを踏んでも、必ずしもうまくいくとは限らない。失敗することもある。(本書P146)

結果として裏目に出るのはかまわない。・・・どんなに入念に準備したとしても、百パーセント成功することはありえない。・・・プロセスがきちんとしていれば、たとえ失敗しても、何が悪かったのか、どうして失敗したのか、原因をつきとめ、修正するのは難しくない。必然的に、次は成功する確率が高くなる。(本書P147)

営業活動プロセスにおいてもマネジメントプロセスにおいても参考にすべき点です。

失敗を恐れぬ勇気をもって試合に臨む/臨ませることとは、プロセスの失敗をたくさん経験し/させることによってのみチームや人は成長できるということだと思います。

損して得とる、トータルで勝つ

最後に、あえて失敗し/失敗させ、気づき/気づかせ、最終的には勝つことを目指します。

以上3つが私が本書から読み取ったよい負けかた=勝ちにつなげる負けかたをするポイントでした。書いてあることを読むとわかっている!と思います。しかしそれを実際に実践しようとすると、PDCAも、5W1Hと「WHY NOT?」も、訪問前事前準備も、振り返りをプロセスで行うことも、・・・意外とできないものです。

この点について、私自身の現役時代を振り返っても反省すべき点はありますし、また現在コンサルタントとして活動していますがどんなに立派な会社でもPDCAを本気で回せている会社は少ないですし、5W1Hと「WHY NOT?」で語れている人も少ないです。

成功と失敗は紙一重(本書P153)

氏が語っています。

どんな小事も明日(次)に延ばさず、一つひとつつぶしこんでいくことこそ明日(次)のそして最後に「勝ちにつながる」唯一の方法である。それがプロというものであることを私は本書であらためて認識させていただきました。

5. 負けを活かすリーダーの条件

野村氏は、最終章でリーダーについていくつかのポイントを書いています。

そのなかから営業マネージャーおよび営業リーダーに役立つ3つを選んで以下に紹介したいと思います。

5-1. リーダーの度量とは十年先を考えられるかである

「これ」これと思った人材を抜擢、信頼し、結果が出るまで待つことができるか。言い換えれば、近い将来の大きな成果のために、目先の利益をあえて捨て、ある程度の失敗や負けに目をつぶるだけの覚悟を決められるか―リーダーには、それだけの度量が求められるということである

(本書P188~189)

監督のチーム育成力が弱くなった原因の1つに監督の任期が短くなったことを氏は指摘していますが、会社においても同様です。

しかし他責にしても何も始まりません。

以下は私の考えですが、対策は2つあると思います。

1つは、自分の任期のなかでできることをやることです。具体例で示すと、営業として担当市場任期、また組織のマネジメントにおいて3年の任期を得たとします。前任者から長期計画・ビジョンが引き継がれればベストですが、そうでなかった場合でも過去3年間と自身が担当するこれから3年を含めた向こう7年を足した10年の長期計画・ビジョンを自分なりに描くのです(私は4P×攻・守・育で行いました)。そして10年間の途中にある自身が担当する3年間の計画を立て実行するのです。そして私の任期が終了したらそれを後任に引き継ぎます。・・・これが私が自分の任期のなかでできることをやるという意味です。

もう1つは、自分の任期を越えて居座ることです(笑)。自慢話に聞こえることを恐れず書くと、私は一度だけ実行したことがありました。私は若くして販売会社の社長を任されたことがあります。おそらく会社経営を勉強してこいというキャリアパスの一環だったと思います。ところがいざその会社に行ってみると問題・課題が山積です。3年間頑張りましたがせいぜい基盤づくり程度で、とても成長路線に乗せることができませんでした(原因は明らかに私の実力不足です)。そこで私は、こんな小さな会社ひとつ成長させられないで、本部に戻って何ができるのか?と悩み、本部戻りの異動を辞退し、結局9年間その会社に居座りました。その結果、私のキャリアパスはボロボロになりましたが(笑)、一方でそこで得た成長の実現は私の自信になり、今日コンサルタントとして仕事をさせていただいている根拠にもなっています。

・・・野村氏の話に戻すと、営業担当地域、部門のマネジメント、会社経営のどれをとっても、短期ではできないということです。それを実現するためには10年目線というか10年を見据えた対応の仕方をとらなければ、本当のお客様、部門、会社は育たないということではないでしょうか。

ただ最後に、私は野村氏の上記文章のなかで、ひとつだけ営業が参考にしてはいけないと思う点があります。それは「近い将来の大きな成果のために、目先の利益をあえて捨て、」の箇所です。・・・少なくともビジネスの場合においては、短期と中長期の2トラックで進めるべきです。短期=目先の利益を捨ててはいけません。なぜなら、野球は100何10試合の合計で優勝が決まります。仮に1・2試合捨てても、最後に優勝できればOKです。営業は1つの売上・利益を捨てたら、もうそのお客様は戻ってこない可能性があるからです。

5-2. リーダーが失敗を恐れず、学び続けること

「組織はリーダーの力量以上には伸びない」

これは組織論の原則であり、私自身がつねに言い聞かせてきたことだった。(本書P211)

と氏は振り返ります。

私も耳の痛いところですが、その通りだと思います。

営業でいえばテクニカル・スキル~ヒューマン・スキルまで死ぬまで勉強だと思います。野村氏の頭の良さと勉強力には敬服する次第です。

4-2. 人を遺(のこ)すを上とする

財を遺(のこ)すは下、仕事を遺すは中、人を遺すを上とする

(本書P133)

「 財を遺すのも業績を遺すのも大切ではあるが、人を遺すのはそれ以上に困難であり、人を遺すことができれば、財産も業績もおのずとついてくる」という意味で氏はこの言葉を多用されます。

一貫して氏に流れる人生訓・格言でしょう。

営業においても、時の流れ・技術の変化とともに仕事の仕方も、お客様も後輩営業も世代交代します。しかしともにありたい姿を目指したお客様、後輩営業はその経験をもとに次の世代を創っていきます。そしてありがたいことに彼らは旧世代の私とも昔を懐かしみ・あの時があったから今こう変わったよと報告してくれます。

財や業績のことはわかりませんが、私にも少なくとも人を遺すことはできたのかなあと思う瞬間です。

皆さんもこの言葉をかみしめてください。

私はよい人生訓・格言だと思います。

以上、「【営業力強化】『負けかたの極意』(野村克也著)にみるプロの心と技②」について長々と書いてきました。

そうとう書いたつもりですが、量・質ともに野村氏の著書の3%にもおよびません。

私の記事を読んで、一度本書を読んでみようかなあという方には、ぜひお薦めしたいと思います。・・・買って読んでください。

負けかたの極意

負けかたの極意

  • 作者:野村 克也
  • 発売日: 2013/05/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 さいごに、

「失敗」と書いて「せいちょう(成長)」と読む(本書P192)

まさにこの一文が、野村氏の『負けかたの極意』を表した一文ではないでしょうか。

営業の皆さん、マネージャーの皆さんの多くのよい負け(失敗)に期待します。

長文、駄文を一読いただきありがとうございました。