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課題解決型営業を実践するにあたって基本中の基本を確認しよう

 <悩んでいる人>

営業は課題解決が仕事というが具体的な進め方がわからない(営業)

私なりに課題解決提案を行っているつもりだが結果につながらない(営業)

(結果につながらない→途中で検討が止まる・競合負けする)

上記について相談を受けるがどうしていいかわからない、アドバイスできない(マネージャー)

アドバイスするが本当に理解してくれているのだろうか不安である(マネージャー)

こんな悩みを解決します。

上記の<悩んでいる人>はとくに新人営業や営業経験の少ないマネージャーが多いと思います。こういう人たちに「具体的な進め方」やこうすれば「結果につながります」という方法を提供するしかたはいろいろあります。

しかし私の経験からいうとどんな方法を提供し指導したとしても、営業パーソンはそのときはわかった気になって実践するけれども実はしっくりいってないケースが多いのではないかと思います。

なぜならば会社のしくみや戦略の考え方~いくつかの重要な言葉の定義まで基本が理解できていないと本当の理解になっていないからです。

そこで今回は、以下の2回に分けて、多分に教科書的な説明になってしまうことは否めませんが、この点だけは基本中の基本としておさえておこうという点に絞って説明したいと思います。

【営業力強化】

課題解決型営業を実践するにあたって基本中の基本を確認しよう・・・①

【営業力強化】

アカウント顧客戦略の基本中の基本を確認しよう・・・②

本記事は①です。

 

<本記事の内容>

  1. そもそも会社とはなにか
  2. 会社がつねに直面する問題(点)・課題についての基本中の基本
  3. 営業パーソンの取り組みの基本ーお客様課題の解決のために

 

1. そもそも会社とは何か

いろいろな説明のしかたがありますが、お客様の課題解決を仕事とする営業パーソンとして(自社の理解もそうですが、お客様を理解するうえで)以下の4つは最低限アタマにたたきこんでおいて欲しいです。

1-1. 会社とはINPUT→価値創造→OUTPUTするシステムである

会社は外部と自社との間に相互作用をもち「INPUT→価値創造→OUTPUT」するシステムとして活動しています(下図「企業はオープンシステム」を参照)。

具体的には、市場からヒト(仲間・働く人)・モノ(生産設備や原材料・仕入商品など)・カネ(運転資金など)などを調達し、自社でお客様にとって価値ある商品(製品やサービス)を生み出し、それを市場に販売する活動です。

1-2. 会社は価値創造を行うためにバリューチェーン(価値連鎖)を形成する

会社は市場に販売する商品の価値を創造するために事業ごとに「バリューチェーン(価値連鎖)」を形成しています。下図「(A事業の)バリューチェーンモデル」は一般的なものを示しています(主活動・支援活動の内容は会社によって異なります)。

そして、バリューチェーンとその結果の関係は以下のとおりです。

  • バリューチェーンを通じて創造した最終価値=マージン(利益)
  • 最終価値が競争相手に劣ればマージン(利益)は少なくなる/赤字になる(会社として市場から必要とされなくなる)

よって会社はつねに効率・効果的に価値創造を行うために、バリューチェーンの各工程の量や質、つながりを修正・強化しています。

1-3. 会社は組織と戦略の集合体である

会社は内部に組織と戦略をもちます(下図「企業の統制構造」を参照)。

戦略は全社には経営戦略(=全社戦略)、事業ごとには事業戦略、そして購買・開発・生産・販売などの機能別戦略をもちます。

そしてそれぞれの組織と戦略はすべて経営理念やビジョン、そしてそこから導かれた経営戦略にひもづいた戦略であることが原則です(下図では「統制構造」というきつい表現を用いています)。

詳しくは後述しますが、営業パーソンが取り組み対象とするお客様課題は必ずこの戦略に関連することです。

1-4. 会社はゴーイングコンサーン(継続企業体)である

会社はゴーイングコンサーン(継続企業体)です。

1-2. で述べたように、会社はつねに外部環境の変化に対応しながら内部のさまざまな活動の量や質、つながりを修正・強化しながら、下図「ゴーイングコンサーン」のように新しい事業を市場に送りだし価値を高めていきます。

 

2. 会社がつねに直面する問題(点)・課題の基本中の基本

前項の4つのポイントからわかるように、会社は外部環境の変化にともない、また自社のバリューチェーンを効率・効果的にするために、ゴーイングコンサーンであるためにつねに問題(点)・課題に直面します。

それでは問題(点)・課題とはなにでしょうか。ここでは問題・問題点・課題という言葉について整理しておきます。

下図を参考に以下を確認してください。

2-1. 問題とは

会社がこうありたい/あるべきと思う目標と現状の差(GAP)を問題と定義します。

具体的には事業が計画通り伸びない、営業計画が達成できない、品質トラブルが増加しているなどネガティブな事柄が問題にあたります。

2-2. 問題点とは

問題のなかで(自責として)対処可能なこと/手を打つことができることを抽出したものを問題点と定義します。

2-3. 課題とは

目標と現状の差(問題)から対処可能な問題点を抽出し、その問題点を解決するためにやるべきこと/やると決めたことを課題と定義します。

以上この3つの定義と関係を図式化すると以下のようになります。

 

 

詳しくは「Kaizen Base」(カイゼンベース株式会社が運用するサイト)をご覧ください。

コチラ↓

www.kaizen-base.com

ていねいにわかりやすく説明されています。

2-4. 課題には階層とカテゴリーがある

次に課題には階層があることを営業パーソンは認識しておく必要があります。

お客様の課題は階層別に経営(全社)の課題、事業の課題、部門の課題、業務の課題と大きく4つに分けてとらえることができます(←「組織と戦略の集合体」)。

それらは下図のようにそれぞれつながりがあり、課題の階層構造を成(な)しています(上位の課題を複数の下位の課題が構成しているのが一般的です)。

そして各課題には担当者がいます(経営の課題には経営者、事業の課題には事業部長、部門の課題には部長、業務の課題には課長~業務担当者などです)。

 

 

ちなみに課題はどの階層の課題であっても「財務の課題」、「業務効率の課題」、「イメージ上の課題」の3つのカテゴリーでとらえるととらえやすくなります。

例えば1つの課題が財務の課題であり業務効率の課題でもある場合がります。その場合はその課題を財務視点からみたときにどうか・業務効率の視点からみたときにどうかとわけて考えると解決策がより具体的になります。

2-5. 課題には顕在課題と潜在課題がある

そして課題にはすでに認識している課題(顕在課題)とまだ認識できていな課題(潜在課題)があります。 

お客様と営業パーソンの顕在・潜在課題の関係を整理すると下図のようになります。

 

 

※表中の「見えている」「見えていない」↔「認識している」「認識できていない」に変換してみてください。

お客様が認識している課題×営業パーソンが認識している課題・・・A

お客様が認識している課題×営業パーソンにが認識できていない課題・・・B

お客様が認識できていない課題×営業パーソンが認識している課題・・・・C

お客様が認識できていない課題×営業パーソンが認識できていない課題・・・D

3. 営業パーソンの取り組みの基本ーお客様課題の解決のために

以上に、会社を理解する4つの基本中の基本について、問題(点)・課題の定義と課題の基本中の基本の2つについて書いてきました。どれも目・耳にしたことがあることばかりだったと思います。

しかし知っていることと活用することは別物です。私がここであらためて基本中の基本を書いたのは以下のことに活用してもらいたかったからです。どれも課題解決を実践するにあたって重要なことばかりです。

皆さんのいまの取り組みと比較して不足点あれば取り入れられることをお薦めします。

3-1. 課題を大きくとらえる意識をもつ

営業パーソンはお客様に商品(製品・サービス)を提案し販売に結びつけます。それが業務ゆえ、ともすればお客様が商品に関心を示すとそれに飛びつきがちです。問題点は速攻で解決する。一方で重要なことは課題をいかに大きくとらえるかです。

なぜならば課題を大きくとらえることにより、①お客様の経営のなかでの対象課題の位置づけが明確になる(商談(案件)や予算の優先順位など)、②競争相手の提案との差別化につながる、③商談(案件)の規模が大きくなる、④商談(案件)連鎖につながる、可能性があるからです。

それではお客様課題を大きくとらえるための4つの基本について説明します。

・訪問前にお客様のことを知る努力を怠らない

まず訪問前にお客様に関して収集できる情報はできるだけ収集しておくことです。(訪問は最低限お客様の基本情報についてはすでに知っている状態からスタートします。)なぜなら課題を大きくとらえるためには、会社を取り巻く外部環境のこと・会社経営のこと・事業のこと・バリューチェーンの各工程のこと・現場の実態など、お客様に多くの拡大・限定質問を繰り返し知る必要があるからです。

・つねに新たなWhy?を整理・分類し繰り返す

そして質問を繰り返しお客様のことを知れば知るほどつねに新たなWhy?が生まれてきます。それを自分で確認できることと上司や先輩の力を借りなければ確認できないことに整理・分類して、自分で確認できることを優先して確認を繰り返します。

・他部門への訪問を常套手段にする

このとき確認相手は例えばお客様担当者など1人から行わないことです。例えばバリューチェーンの各工程のことはその工程を担当する部門や人に直接確認すべきです。担当者は自分が所属する部門のことはわかっていても他部門のことや現場のことは意外に知りません。

営業パーソンは他部門への訪問を常套手にして正しい確認を積み重ねていくべきです。

・階層別コミュニケーションを有効活用する

課題には階層とカテゴリーがあると上述しました。経営のことは経営者同士、事業のことは事業担当者(ex.事業部長など)同士のほうが、よりお互いを理解し課題を共有できます。よって階層別コミュニケーションを積極的に有効活用することも営業パーソンの常套手段にすべきです。

お客様は自社の経営に必要な情報や課題解決提案には好意的です。

3-2. お客様にとっての潜在課題を探し顕在化させる

お客様課題を大きくとらえたら、営業パーソンは顕在問題点・課題の解決に当たるとともに、併せてお客様の潜在課題を顕在化させることに注力します。ひらたくいえば「お客様に多くの新たな気づきをたくさん提供する」ことです。

お客様が商品を購入する工程を大きくわけると「購入前の検討」と「購買」、「導入後フォロー」の3つに分けることができます。お客様にとって営業パーソンに価値を感じるときは「検討するとき」と「導入後フォロー」です。そしてお客様が価値を感じる内容は「新たな気づき」です。あなたは「購買」のタイミングでだけで勝負していませんか? 

3-3. 提案が及ぼす影響(効果)も大きくとらえる意識をもつ

3-1、3-2ができるようになれば、営業パーソンの提案が及ぼす影響(効果)も大きくとらえることができるようになります。例えば、ある部門の業務課題を解決することによりその上位にある事業の課題さらに経営課題解決に貢献できる、またバリューチェーン上のある部門の前後部門の業務課題にも貢献できるなどです。

このように提案が及ぼす影響(効果)を大きくとらえる意識をもつことにより、競争相手と提案の差別化になりますし、お客様稟議ルートにおける合意者を増やし・より上位決裁者へのアピール力を強化することにもつながります。

すなわち営業パーソンの提案は「強く」なります。

3-4. 1つの課題解決が次の課題解決のスタートになる意識と仕掛けをつくる

さいごに1つの課題解決が次の課題解決のスタートになる意識と仕掛けをつくることです。具体的には「この課題を解決したら次はこの課題の解決に着手しましょう」と課題の構造を整理したうえで、課題解決のスケジュールをお客様に提示して共有します。

私が営業マン時代の提案でとくに意識していたことはこのことでした。「契約締結の押印」=「次の提案のスタート」です。3-1~3-3までは実はこの瞬間のためにあります。

4. おわりに

これまで「【営業力強化】課題解決型営業を実践するにあたって基本中の基本を確認しよう」について書いてきました。いかがでしょうか。

会社を知り、会社の問題(点)・課題のとらえ方を知ることによって、営業パーソンの課題解決型営業の質は間違いなく変わります。

一見遠回りのようですが継続的な営業成績の向上、そして何よりお客様に認められる営業になるために、ぜひ実践されることをお薦めします。

さいごに特に「3. 営業パーソンの取り組みの基本ーお客様課題の解決のために」はSIer向けに読めるかもしれません。・・・そんなことはありません。単体の製品販売においても十分参考にできる取り組みの基本と考えます。

がんばってください。