<悩んでいる人>
- クロージングをかけた(=お客様に契約を依頼した)がお客様が良い反応を示さなかった。次にどう進めたらいいのかわからない。(営業)
- 上記について部下からアドバイスを求められたが、アドバイスの仕方がわからない。(マネージャー)
こんなお悩みを解決します。
<本記事の内容>
- 本記事における障害とは?、障害はなぜ発生するのか?
- 障害への対処法(2ステップ)を身につける
- 障害克服法(3ステップ)を身につける
前回は【営業力強化】成約率アップを目指すクロージングトーク9選で、実績・定評のあるクロージングトークを紹介しました。
【営業力強化】成約率アップを目指すクロージングトーク9選 はコチラ↓
nanndemotanoshimo.hatenablog.com
いかに優れたクロージングトークを使ったとしても、お客様は営業パーソンが期待する通りの反応(契約の合意を得る・合意に近づける)を示してくれないこともあります。これは営業の宿命でしょう。ただお客様のネガティブな反応がクロージングの段階で発生したら、それは契約締結にとって致命的な障害になる可能性があります。よって一刻も早く対処したいものです。
そこで今回は、障害にどのように対処・克服し契約締結につなげていくかについてのノウハウを「成約率アップのための障害への対処・克服法」にまとめました。
本記事で紹介する対処・克服法はクロージングトーク同様に実績あるものです。この記事を読んで内容を理解し手順に従ってしっかりと障害への対処・克服を実践することによって、営業パーソンはさらにもう一つ上のクロージング力を備えることができます。
1.本記事における障害とは?、障害はなぜ発生するのか?
まず障害とは何か?について整理します。
本記事における障害とは、
- 営業パーソンが契約締結に至るまでに発生した契約締結を阻(はば)むさまざまな事柄
と定義します。
次に、なぜ障害が発生するのか?についてですが、その理由は以下の2つに集約できます。
- クロージングをかける(=契約を依頼する)十分な条件がそろっていないままクロージングをかけてしまった
- 予測不可能な事態が発生しお客様の状況が変化した
それぞれについて、以下に説明します。
クロージングをかける十分な条件がそろっていないままクロージングをかけてしまった
クロージングをかけるには、一般的に以下の条件が必要です。
- お客様との信頼関係ができている
- お客様のニーズやウォンツが把握できており、それを充たす商品の品質(Q)と価格(P)、サービス(S)の説明・提案ができている→お客様はそのことを理解し商品に関心をもっており、必要性も多かれ少なかれ感じている
- 予算額が聞けている→予算額をふまえた説明・提案ができている
- 担当者・商談(案件)に影響を及ぼす人・決裁者を確認できている→各人の立場をふまえた説明・提案ができている
- いつまでに購入・導入したいかについて聞けている→購入・導入時期をふまえたスケジュール表ができている、商品在庫も確認できている
- 競合他社も検討しているかどうかについて聞けている→競合他社の動向をふまえた説明・提案ができている(ex.商品の優位性など)
②~⑤はBANT(バント)と呼ばれ、商談(案件)の成立の確からしさを評価する基準として定評あるものです。
BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁兼・決裁ルート)、Needs(ニーズ・必要性)、Timeframe(購入・導入時期)の頭文字をとったものです。
②~⑤はそれぞれ③→Budget、④→Authority、②→Needs、⑤→Timeframeに対応しています。これに⑥→Competitor(競合会社の動き・競合商品の検討状況)を加えました。
これらの条件の1つ以上のどれかが不十分なままクロージングをかけてしまったときに、お客様は営業パーソンの期待通りの反応(契約の合意を得ること・合意に近づけること)を示さないことがあります。
予測不可能な事態が発生しお客様の状況が変化した
また営業パーソンが営業活動を進めるうえで、例えば以下のような状況が発生した場合に、お客様は営業パーソンの期待通りの反応をしなくなります。
- 会社の経営状態が悪化したため予算額が大幅に縮小された
- 決裁ルートに競合他社贔屓(びいき)がいた
- 会社の方針がかわり、解決すべき問題点・課題の優先順位が変わった
- (例えば工事が遅れるなどして)購入・導入納期が後ろ倒しになった
- 競合他社が大幅な値引き額を提示してきた
などです。
toB営業向けに例をあげましたが、toC営業にも共通の条件です(読み替えてください)。
これらはお客様を取り巻く環境やお客様の経営、お客様都合、競合企業の動きなどが原因によるもので、営業パーソンもお客様も予測不可能なこと・事前にコントロールできないことばかりです。
以上のように、営業パーソンのお客様への活動不足と、予測不可能な事態の発生が、契約締結を阻むさまざまな要因=障害を生み出す理由の詳細です。
2.障害への対処法(2ステップ)を身につける
それでは、これらの障害が発生したときに、営業パーソンはどのように対処したらいいのかについて、ステップ1:障害の実体を正しく確認する、ステップ2:これまでの活動を振り返り修正点を見つけて速(すみ)やかに対処する、の2ステップで紹介します。
ステップ1:障害の実体を正しく把握する
営業パーソンがお客様にクロージングをかけお客様が期待通りの反応を示さなかったときに行うべきことは、まずその障害の実体を正しく把握することです。
例えば、お客様が価格面について難色を示した場合、お客様は、
- 単純に安くして欲しいと思っている
- 商品の価値効用に対して提示価格は高いと思っている
- 競合会社が破格の価格を提示してきた
- 当初予定していた予算額が削減された
- ・・・・・
など、さまざまな理由が考えられます。その理由を正しく把握できない/しないまま対処しようとすると間違った対処になり営業パーソンは本来得られるはずの利益を失うだけでなく、お客様の不信感をかってしまうなど新たな障害を生み出してしまう可能性があります。
お客様は営業パーソンが薦める商品を買うことは決めており最後にもう少し安くして欲しいと思っているだけなのに、営業パーソンは過剰反応し過ぎてすぐ値引対応を行ってしまうことにより利益を失い・不信感につながることはよくある例です。→この例は実は障害でさえなかったとも考えられます。
ステップ2:これまでの活動を振り返り、修正点を見つけて速(すみ)やかに対処する
次に障害の実体を正しく把握できたら、これまでの活動を振り返りその障害の発生原因を考えます。
例えば、お客様が商品の価値効用に対して提示価格は高いと思っているケースでは、
- お客様のニーズやウォンツが把握できており、それを充たす商品の品質(Q)と価格(P)、サービス(S)の説明・提案ができている→お客様はそのことを理解し商品に関心をもっており、必要性も多かれ少なかれ感じている
と思っていたが、そうでなかったと振り返り、
- お客様のニーズやウォンツを再度確認する
- 新たに確認されたニーズやウォンツを商品が品質(Q)と価格(P)、サービス(S)の点で充たすことを再度説明・提案する
- 場合によっては、お客様の理解度を上げるために試用期間を設ける
- ・・・・・
など、修正点を見つけて速やかに対処します。
以上のようにステップ1とステップ2をあわてずに・ていねいに・かつ速やかに行うだけで多くの障害に対処することができ、お客様を期待通りの反応に導くことができます。
3.障害克服法(3ステップ)を身につける
障害への対処法(2ステップ)では対処できないケースもあると思います。
上記の障害例でみると、
- 競合企業が破格の価格を提示してきた
- 当初予定していた予算額が大幅に削減された
などの障害が発生したケースです。
これらの障害が発生したときの克服法として、ステップ1:お互いの契約締結を実現したいという思いと信頼関係を確認する、ステップ2:制約条件を確認し代案を検討する、ステップ3:速やかに代案を実行に移し克服に向かう、の3ステップで紹介します。
ステップ1:お互いの契約締結を実現したいという思いと信頼関係を確認する
まず障害克服法を行うにあたって重要なことは、お互いの契約締結を実現したいという思いと信頼関係の存在を確認することです。このステップ1でその2つが確認できなければ、障害克服法は実行できません。
もし自信がなかったり、お客様との距離感を少しでも感じるならば、クロージングトークの①総括結論法、②事例提示法、③共同作業(パートナー)法を使って、距離を縮めます。
【営業力強化】成約率アップを目指すクロージングトーク9選 はコチラ↓
nanndemotanoshimo.hatenablog.com
そのうえでステップ2に進みます。
ステップ2:制約条件を確認し、代案を検討する
例えば、
- 当初予定していた予算額が大幅に削減された
という障害を認識した場合、例えば以下のように相互の制約条件を確認します。
- 商品の必要性を訴求することによって予算額をもとに戻せないか(お客様)→NO!
- 商品の値引はどこまで可能か(営業パーソン)→NO!
あわせて契約締結ができないことにより、両社に発生するリスクも確認します。
- 今回導入できなければ現場改善は進まず、生産性は低いまま放置され会社は競争力を失ってしまう(お客様)
- 予定していた売上が獲得できず目標が達成できない(営業パーソン)
- これまでのかかった工数が無駄になってしまう(営業パーソン)
例えばですが、このようなリスクを相互確認します。
次に、確認された制約条件とリスクをふまえたうえで、代案を検討します。
- 削減された予算内で生産性改善に取り組む方法として(お客様)、
- 値引せず・売上を獲得でき・これまでの工数金額を回収する方法として(営業パーソン)、
- 今回の導入予定を今年・来年の2回に分割して購買・導入契約を締結する
などが、代案(例)として浮かんできます。
ステップ3:速やかに代案を実行に移し克服に向かう
代案が決まったら、相互に自社内で根回しを行い、決裁を得るための提案書、稟議書、見積書などを再作成し、稟議申請を速やかに実施します。
以上が障害克服法の3ステップです。この克服法を活用すれば、かなり難易度の高い障害も克服できるはずです。
ここではtoB営業の例を説明しましたが、toCでも適用できる方法です。
本記事では、障害とは? 障害はなぜ発生するのか?に始まり、障害への対処法(2ステップ)を身につける、障害克服法(3ステップ)を身につける、の流れで紹介してきました。
多くの障害は対処法で対処できます。それでも難しい障害に対しては障害克服法を使います。
営業パーソンは障害を正しく認識し、障害への対処・克服をすることによって、さらにもう一つ上のクロージング力を備えることができます。
ぜひ実践されることを期待します。